2014年1月18日土曜日

宇宙戦艦ヤマト2199考Ⅴ



4.     戦略と戦術(2/2)
 

 
 森雪が、デスラーに向かって「地球もガミラスも戦うことなんてなかった。愛し合うことだってできるのに。」と叫びます。

 ここには本質的に重要な意味があると思います。古代から未来にいたるまでいつの世も戦争を起こすのはその国の体制側である為政者たちです。

 理由はいろいろあれど基本的には自分たちの既得権を守るために戦争を起こし国民だけが死地に追いやられます。

 いっそのことそういう為政者たちや扇動者たちだけで部隊を作り本人たちだけで戦争をやればいいのです。デスラーと芹沢虎鉄、ズォーダー大帝の3人で共に差し違えたら宇宙が平和になったことは間違いありません。


  血塗られた戦争の連鎖を人類は宇宙はいつまで続けるのでしょうか。いつになったら森雪の叫びは我々に届くのでしょうか。


 七色星団において敵将ドメルは空母4隻の機動部隊しか与えられていませんが、開発兵器部の極秘試作品である瞬間物質輸送機を用いた重爆撃機や雷撃機で戦術を組み先に攻撃を仕掛けることで戦闘の主導権を握りヤマトを散々に苦しめます。


 攻撃を先制されレーダーを失ったヤマトは人間の目で警戒し、ひたすら耐えしのぶことしかできませんが、そんななかでも爆撃機をワープさせて攻撃していることを看破し、さらには機動部隊が直接攻勢をかけてくるのを予測、イオン乱流の本流がどこにあるのかを調べさせるなど「常識に囚われない」沖田艦長は老獪で判断に誤謬がありません。


 七色星団を選択したときに、沖田艦長にはドメル旗下の彼らが来るような予感があり、猛烈に時化(しけ)ている宇宙空間など「地の利」を利用する戦術構想がその時、もうあったのかもしれません。

前回カレル163宙域において追いつめられたのは艦隊戦だったのに七色星団では爆撃機による機動攻撃という攻撃方法の変更に亜空間ネットワークを撃破されたガミラスの窮状を見極めていたと思います。


 なお、戦略に用いられる策略とはダマすことではありません。人間心理の流れを見抜いて戦術の効果を無理なく発揮させた沖田艦長の行いが本道なのです。

しかし、ドメルの部下達、ゲットー、バーガー、フラーケンなどみんな素晴らしい男達でそれぞれが艦隊指揮をとれる能力を有するのに今回七色星団では首都防衛をつかさどる親衛隊のいやがらせで老朽空母しか配備されなかったことが敗因の一つでした。

あのバーガーがオンボロ空母のなかで「もう一度爆装させろ。」や「こんな最後認められるかよ。」と訴えている姿なぞ哀愁を漂わせており、こんな男達を重用できない組織だからこそガミラスは凋落していくのかもしれません。

 文明が滅びるときはその兆候が表れますが、2199ではデスラーの企図する版図拡大により、惑星蜂起などの混乱・人民の心が乱れガミラス文明が衰退する大きな流れが発生しつつあるときにヤマトという戦艦が出現しその流れを加速させたという展開になっています。戦艦一隻の戦術だけでは敵国が滅びないところを描けているのが凄いと感じます。


 バラン戦を攻略、亜空間ネットワークを崩壊・爆逐させ、ガミラスの主力艦隊を3ヶ月の彼方に置きざりにし、ドメルと旗下の猛将たちもしりぞけた沖田艦長の戦略・戦術的な行為によりサレザー星系にワープしてきたヤマトに対し、デスラーとしては奇襲による襲撃をかけるしかありませんでした。相手にその選択しかないように選択肢を狭める戦略も方法論としてはありますが、この場合は追い込まれたデスラーが沖田艦長の想像を越えた戦術にでたというところが正確かもしれません。もっとも彼の本質としてそういう襲撃が好みのような気もしますが・・・。

ガミラス本土を防衛していたのは親衛隊長ハイドム・ギムレーですが、彼が本当に防衛していたのは、第二バレラスでした。見せかけのため形だけ空母3隻と戦艦5隻を総統府へ攻勢を掛けるヤマトに対し投入します。 
     

 ギムレーには、オルタリアの惑星蜂起の際に惑星を殲滅した最新鋭の戦力があったので、ヤマト攻略をなしうる能力を有していたハズですが第二バレラスの警護「しか」していません。

本国へ戻れないガミラスの主力艦隊もそうですが、戦力を高速で移動させ決戦すべきポイントへ集中する。古くはナポレオン、2199ではドメル大将が得意としたその戦術の基本を忘れ、遊兵を作ったら勝てる戦争も勝てません。   

このあたりにもデスラーやギムレーの戦術上のミスが垣間見え、これも敗因のひとつとなっていると思います。


 サレザー星系エピドラ付近を航行するヤマトに放たれたデスラー砲の初弾をからくも逃れ、ギムレーが配置した首都防衛の艦艇を撃破し、総統府へ突入したヤマトに、デスラー総統は自分の目指す理想郷をつくるため、第二バレラスの一部を分離しコロニー落としを仕掛け、再度デスラー砲により総統府ごとヤマトを沈めるよう攻撃を敢行します。自分の人民とともにヤマトを葬る、タランを驚愕させたこの戦略・戦術行為によりデスラーは人心をも分離してしまいます。

経営的なアプローチにおいて、今は顧客の心の変化を見誤ると例え大組織といえども組織は衰退せざるを得ません。その兆しは至る所で垣間見ることができるのですが状況全体は、非常に複雑になっており、兆しを見つけ分析的アプローチをとっていても必ずしも対処出来ず失敗してしまいます。

 
 デスラー総統や総統府の幹部たちが人民の心の変化や情勢を見誤り、戦略的な失策を重ね国の経営に失敗したことにより今後黄昏の帝国として凋落すると思われますが、そのツケはそういう独裁者たちを出現させ熱狂的に応援した人民が支払うことになる。 

これは歴史の必然でもあります。

そんなガミラスの首都バレラスの人々が見たのは、総統府に突入を敢行し総統府と一体化したヤマトの艦首次元波動砲から発射された「青い閃光」により第二バレラスのコロニー落としを防いだということです。

  
 ヤマトが総統府と一体となり首都バレラスの人々の危機を救った沖田艦長の行為は今後のガミラスと地球の関係を修復する象徴的な出来事と感じています。

  囚われの身の森雪やノランの活躍により第二バレラスのデスラー砲を破壊することに成功しますが、古代が宇宙空間で雪を見つけることや第2バレラスの爆逐に巻き込まれないようヒロインのもう一工夫が論理的に表現できていれば物語としてさらに良かったのですが、このあたりは伝奇ものの世界観かもしれません。でもそういう奇想天外な面白さもヤマトの魅力のひとつです。

   
 ところで「たった一人の戦争」ってTVタイトルは雪のことだとずっと思っていたけど雪にはノランがいたし、戦争を連呼していたのは デスラー総統だよなと。そう思うとこの題名は意味深に感じます。

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