2014年1月18日土曜日

宇宙戦艦ヤマト2199考Ⅲ



3.     哲学 ~信念~



 地球最後の艦隊による最終決戦の際、戦艦キリシマ艦橋において沖田艦長が発する言葉にこの物語のフィロソフィー(哲学)を感じます。


 敵艦より通信で降伏勧告をされたときの返信「バカメ」、古代守が敵艦隊へ突っ込まないよう諭す「明日のために今日の屈辱に耐えるのだ(このセリフはなかった残念。)」、敵艦隊へ突出していくゆきかぜ古代に対して「古代!死ぬなよ」、戦艦キリシマの脇を通過し地球を直撃するコースの遊星爆弾を見て「悪魔め。わしは命ある限り戦うぞ。決してあきらめたり、絶望はしないぞ。たとえ最後のひとりになってもわしは戦うぞ」など沖田艦長の激白に心をゆさぶられます。 


 絶滅しつつある地球生命体の「男の決意」によりこの物語がReスタートします。

  
 沖田艦長が病気で倒れる前に戦術長 古代進に対して語る言葉が心を打ちます。

 ガミラスとの初遭遇において回想しながら「先制攻撃に反対して解任された。命令に逆らう。軍人としては間違った行動だ。あってはならない。だが軍人であってもひとりの人間として行動しなければならないこともある。人は間違いを犯す。もしそれが命令であったとしても間違っていると思ったら立ち止まり自分を貫く勇気も必要だ。そうわしは思う。」沖田が語る言葉にはゆるがせに出来ない信念があります。


 第二次世界大戦中、リトアニアのカウナス領事館に赴任していた日本の外交官 杉原千畝は、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちの窮状に同情し、大量のビザ(通過査証)を発給し、およそ6,000人にのぼる避難民の命を救います。
 
 外務省からの訓令に反したため後に外交官を辞職させられ、その後半生は華やかさとは無縁の不遇を受けます。でも彼もまた沖田の言う「ひとりの人間として行動した」男でした。


 古代進も通常空間とは隔絶した別空間から敵の魚雷攻撃を受けヤマトが危機に陥った際、葛藤します。沖田の意見を受け容れ真田副長の軍令に背きますが敵の次元潜航鑑をしりぞけることに成功します。

  
 宇宙戦艦ヤマト2199では戦闘シーンが数多くありますが、そのなかでも一番厳しい戦いだったのが、カレル163宙域で敵将ドメル率いる銀河方面軍の艦隊に包囲されたときです。沖田が病の治療中外していた際、部下である真田副長が敵将ドメルの智謀による罠に完璧に落ちますが、決して沖田艦長はあきらめません。


 艦首に波動防壁を最大展開しつつ第二戦速でこれを正面突破する指示を出し、「死中に活を見出さねばこの包囲を突破することはできない。」と断固宣言し、火力を前方へ集中させ敵中枢ドメルの巨大戦艦へぶつける覚悟で突破を図ります。苦戦のうえなんとか突破しますが、多数の別動艦隊に捕捉・攻撃され、ショックカノンなどの主要火器や次元波動エンジンなどの戦闘機能が極端に低下し撃沈寸前まで追い込まれます。


 沖田艦長はこのとき沈黙していますが、何を感じていたのでしょうか。

諦めるのでもなく絶望もせず何か「活路」を見出せないかと刻一刻と変わる戦況を観察していたのだと思います。すると敵艦隊の攻撃が沈黙し、ワープアウトして戦線を離脱します。

デスラー総統へのクーデターの濡れ衣をドメルがきせられたため、まさに間一髪で死地を脱します。
 

  「波動エネルギーは武器ではない。武器にしてはいけない。あれは星を渡るためのもの。1年前あなたたちに渡した設計図はイスカンダルへ来るためのもの。」とユリーシャ・イスカンダルより指摘を受けた沖田艦長は、「168千光年を旅する我々にはガミラスから身を守る武器が必要だった。」と答えます。


 「そして作ってしまった。真田が。それではガミラスと同じ。波動砲は本当に身を守るためだけのもの?」懐疑するユリーシャ。「なぜ尋ねないのかな。なぜコスモリバースシステム(以下C.R.S.)を直接もってきてくれなかったのかと。」さらに問いかけるユリーシャ。


 キラー・クエスチョン「正しい質問」という質問がありますが、ユリーシャ・イスカンダルから受けたその更問により、試されていることを悟った沖田はこう答えます。


 「信じて欲しい。われわれを」「我々は試されているのかもしれない。あなたに。あなたたちに。では、全てを見届けていただきたい。ヤマトが、いや人類が救うにたりうる存在なのかどうかを」

  
 こう答えたことで2199ヤマトでは、単なる殺戮や復讐を行うために波動砲を撃ちまくるのではなく、もっと精神的に昇華され「信念」を伴った男の「言葉ではなく行動」として、後に記述する沖田戦略や戦術に次元波動砲は生かされることになります。


 イスカンダルでC.R.S.を受領し、沖田は共に苦労してきた部下たちに語りかけます。「帰ろう。ふるさとへ。」戦場ではあれだけ部下を叱咤する強き男がみせる内面のやさしさに感動します。

物語の最後、命を懸けてなすべきことを為し、死を迎えた沖田艦長が地球に帰還します。


 地球を眼前にとらえ、こみ上げてきた思いのまま独白します。

 「地球か、なにもかもみな懐かしい。」


 信念を貫き通した男の死は荘厳です。

彼の断固たる決意・勇気・知謀・統率がなければこのミッションは成り立ちませんでした。そのなされた営為に敬意を表します。


 そんな男が見せた最後の涙に形容しがたい昂揚と誇りを感じます。

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